ポジショニング(市場での立ち位置)を決める
ここまでセグメンテーション、ターゲティングとみてきましたが、標的市場には必ず、競合他社がいるはずです。そのため、その市場での自社のポジションを理解しておくことが大切です。
例えば、ファッション・ブランドにしても、すべてのブランドがシャネルのポジションを狙えるわけではありません。もっと安価だったり、カジュアルだったり、別に狙えるポジションは必ずあります。
ポジショニングとはそうしたブランドの狙いを消費者の頭の中に、狙った位置、狙ったイメージで占めるようにすることです。
そのため、ポジショニングがうまくいくと、消費者はそのブランドが自分にとって何の役に立つのか、イメージできます。売り手側は、そのイメージにそって商品やサービスを提供していけばよいので、後々の戦略も立てやすくなるというものです。
ポジションのわかりやすい分類として、コトラーはシェア(市場占有率)を基準としたものを紹介しています。
シェアの大きい順に①マーケット・リーダー(青)②マーケット・チャレンジャー(橙)、またはマーケット・フォロワー(灰)③マーケット・ニッチャー(黄土)とわけ、競合他社との競争上の戦略、すなわち「競争戦略」を考えてみるものです。
①のマーケット・リーダーにはその市場でのシェアがトップである企業が分類されます。
②のマーケット・チャレンジャーにはその市場で上位のシェアを持っているが、トップではない企業がここに分類されます。
またマーケット・フォロワーにはマーケットチャレンジャーと同じく上位のシェアを持っているが、トップではない企業が分類されます。
マーケット・フォロワーがマーケットチャレンジャーと違う箇所は、業界トップを目指すよりも、マーケット・リーダーやマーケット・チャレンジャーの優れた戦略を模倣して、コストを抑え高収益を目指したり、無理なシェア拡大は狙わず、業界の安定をはかりながら生き残ための無難な戦略をしたりするとことです。
④のマーケット・ニッチャーにはシェアは高くはないが、ニッチな市場に集中し、独自の地位を築く企業が該当します。
またポジショニングを導き出すために、マーケティングの神様と呼ばれるマーケット論の第1人者フィリップ・コトラー氏は、以下の6つのポイントを提唱しています。
①製品の特性や仕様
②顧客が得られるメリット
③使用場所・人や場面
④競合製品との比較
⑤他社にはない自社のオリジナル
⑥自社製品が含まれる種類・カテゴリー
このようにいくつかの視点がありますが、何を軸にするのかによりそのあとの戦略が変わってきます。その時のタイミングで何が重要なのかをさまざまな視点から調査、分析し見極めることが大切です。
「ポジションから標的市場の選択も考えられる」
以上のようなポジションから、自社に適した標的市場(ターゲティング)の選択も考えられます。例えば、リーダーやチャレンジャーの場合、細分化された複数のセグメントのかなり多数にマーケティングを展開することが可能です。
とくに、リーダーは、すべてのセグメントをカバーする「フル・リカバレッジ」も選択することが可能でし、すべてのセグメントを押さえたうえで、それぞれにセグメント・マーケティングを展開することも可能です。
これに対して、主としてフォロワーでは、いったん細分化を行った後でいくつかのセグメントを選び、そのどれにも適するようなマーケティングを考える必要があります。標的市場の選び方としては、「選択的専門化」「製品専門化」「市場専門化」のいずれかを選択することになるでしょう。
これがニッチャーとなると、ほとんど選択の余地なく単一ターゲットを狙う戦略になります。標的市場の選び方としては、1つかごく少数のセグメントに集中し、他には手を出さない「集中」です。
このように、ポジショニングからターゲティングを選択することも可能です。