~経営の要~

マーケティング

製品の価格設定の方法

価格弾力性なども考慮して価格に応じた需要を予測すると、それが価格設定の上限になります。一方、製品のコストを計算すると、それが価格の下限になります。それに競合他社の分析なども加味して、価格設定の方法を決めていますが、価格設定の方法は、いろいろあります。

 

 一番基本的なのは、製品コストに一定の利益を含む額を上乗せする考え方です。これはコストに加算する額を英語でmarkupというため、「マークアップ価格設定」と呼ばれます。

 

  しかし、それ以外にも価格設定の方法はあります。たとえば、「バリュー価格設定」。この方法はコストや流通を見直して、品質を落とすことなくより低価格を設定するものです。

 

 バリュー価格設定の代表的なタイプに「エブリデイ・ロー・プライシング」があります。これは特売セールなどは行わず、文字どおり毎日、低価格にするというものです。

世界最大のスーパー・チェーン、アメリカのウォールマートが有名ですが、日本でもウォールマート傘下の大手スーパー西友がキャンペーンを行って有名になりました。

 

 これに対して、特売セールでさらに低価格をつけるようなバリュー価格設定は「ハイ・ロー・プライシング」といいます。また 製品コストではなく投資額から一定の収益が上がるように設定すると「ターゲットリターン価格設定」になります。

 

顧客が感じる価値(知覚価値)を分析して決める「知覚価値価格設定」もあります。

その他には、競合他社の価格を基準に決める「現行レート価格設定」や競り(オークション)で決める「オークション価格設定」もあります。

 

 

まとめると……

 

マークアップ価格設定

 製品コスト➕利益

 

バリュー価格設定

(エブリデイ・ロー・プライシング)

常時、低価格

(ハイロー・プライシング)

特売セールでさらに低価格

 

ターゲットリターン価格設定

投資額からの一定の利益がでるような価格

 

知覚価値価格設定

顧客が感じる価値を分析

 

現行レート価格設定

競合他社基準での価格

 

オークション価格設定 

競りで決める

 

という感じです。

 

時に応じて別の価格設定することも

こうして価格設定しても、地域や時季などに応じて別の価格設定することが可能です。

たとえばセールなどでは一時的に、「販売型価格設定」と呼ばれる方法をとることがあります。

 

販売価格設定の代表は、いわゆる「目玉商品」です。特売日などに見かけたことがないでしょうか?ふだんならあまり安売りしない定番商品が、明らかに仕入れ値以下と思われる価格で売られていたりします。

 

これは、目玉商品で増えた客足が他の商品の購入にも向かい、店全体として売り上げを増やすことを狙った価格設定なのです。

仕入れ値を割った(ロス)商品がリーダーとなり、全体の利益を上げるので、販売型価格設定のうちでも「ロスリーダー価格設定」と呼ばれる価格設定です。

 

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 このように価格設定の方法は1つでなく、1度決めたら変えられないというものでもありません。いろいろな価格設定の方法を知っておいて、柔軟に考えることも必要でしょう。

 

消費者の心を動かす「心理的価格設定」のしかた

消費者はさまざまな購買心理を持っているので、その心理に働きかける「心理的価格設定」が必要です。それほど体系的に整理されているわけではありませんが、例えばつぎのような心理的価格設定があります。

 

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まず、よく見かけるのが「端数価格」。おなじみの198(イチキュッパ)や298(ニイキュッパ)などのことですが、たしかに安く感じさせます。

 

 逆に、高いと思わせたい価格設定もあります。たとえば、高級ブランド品や宝石、貴金属といった製品では、自分で商品の価値を判断できる消費者が少ないものです。そのため、価格が価値の目安として受け取られます。

 

「名声価格」は、それに対応してあえては端数などをつけず、堂々と高いと思わせる価格設定をするのです。次に、消費者の選びやすさを狙ったのが「段階価格」。要するに、うな重の松・竹・梅を想像すればよいでしょう。価格に段階を設けて、予算に応じた選択をしやすくするものです。丼ものの大盛・特盛・メガ盛りなどもこの1種ですね。

 

次の「慣習価格」というのは、たとえば駅売店で売られているガムや缶コーヒーなどの価格設定です。これらは以前からの習慣で、消費者はその価格を当然と思っています。

 

そのため、わざわざ安いものを探すような購買心理は働かず、多少の値下げをしても売れ行きに大きな影響はありません。ただし、値下げをすると従来の慣習から外れてしまうので、売れ行きが減ることがあります。

 

この値段なら売れる「ブレーク・ポイント」

もう1つ注意しておきたいのは、価格設定と売れ行き(需要)の関係が必ずしも連続的ではないということです。ある価格設定をすると、爆発的に売れ行きが伸びるというポイントがあるのですが、これを価格の「ブレーク・ポイント」といいます。

 

たとえば、「ワンコイン・ランチ」をうたうお店が数多くあります。もし、同じランチを520円で出すお店があったら、売上の差は差額の20円以上のものがあるに違いありません。わずかな差のようでも、ブレーク・ポイントを割った場合と割っていない場合では、大きな差になることでしょう。

 

低価格を追求していくと、しまいには無料になります。それでは利益がでない、価格戦略にならない、と思うかもしれませんが、そうでもないです。近年、スマホなどで「無料」のオンラインゲームなどが人気なことはご存知でしょう。

 

無料=フリーについては、アメリカの雑誌編集長だったクリス・アンダーソンが、著書で「フリーミアム」という用語を紹介して話題になりました。

 

 フリーミアムとは、「フリー(無料)」と「プレミアム(割増料金)」を組み合わせた造語で、無料のサービスと有料のプレミアム・サービスを組み合わせたビジネスモデルを意味します。

 

たとえば、オンラインゲームをプレーするのは無料だが、そのゲームをより楽しめるプレミアム会員登録は有料、といった具合です。

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一般のビジネスでも「無料」はむしできない

従来、無料でサービスを提供するビジネスモデルは、広告収入で成り立たせるのが一般的でした。検索大手のグーグルもそこからスタートしていますし、古くは民放のテレビ放送なんかもそうです。

 

しかしフリーミアムは、無料サービスでユーザーを増やす一方で、特別な機能や扱いを求める一部のユーザーを有料とし、そこを収益源とするのです

。インターネットの時代の新しいビジネスモデルといえるでしょう。

 

というのは、インターネット上のビジネスでは、顧客1人あたりのランニング・コスト極めて低いからです。

 

 ネットを利用したサービスは、100人に提供しても1万人に提供してもコストがほとんど変わりません。ですから、多数の無料ユーザーにサービスを提供しても、一ぐの有料ユーザーからの収入だけでコストをまかない、ビジネスとして成り立つのです。

 

 

価格戦略

製品戦略に続き、ここからは価格戦略の話に入ります。

 

価格戦略マーケティングの4Pのうちでも、「価格」だけが収益を生む戦略です。他の製品・流通・プロモーション(コミュニケーション)戦略は、コストをかけて「売れる」ことを追求しますが、価格戦略だけは同時に「儲かる」ことも考えます。

 

利益がでなければ、マーケティング以前にそもそも会社は成り立ちません。

といっても、製品のコストに利益を足して価格、と決めていいほど簡単ではないです。

 

コトラーは、消費者が「左から右に」価格を見る傾向があるといっています。

そのため298円の価格は、本当は「約300円」なのに、「200円台」とみえるのだそうです。

 

「売れる」と「儲かる」を両立させる手順とは

製品の「価格設定」は次のように行います。

 

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①価格設定の目的を明確にする

②価格に応じた需要を予測する

③製品のコストを算定する

④競争他社の製品を分析する

⑤価格設定の方法を選択する

⑥製品の価格を設定する

 

「売れる」と「儲かる」を両立させるためには、いろいろな条件を満たす必要があります。まず、何のために価格を設定するのか、目的を明確にすることです。市場のシェアを押さえるための価格設定あれば、利益を確保するための価格設定もあります。何を目的として価格を決めるのか、明確にしておかなければなりません。

 

次に、その価格ではどれくらいの需要があるかを予測します。一般に、価格が上がるほど需要は減るもの。それによって、設定できる価格の上限もかわるでしょう。

 

さらに、製品の生産・流通・販売のコストを算定すると、これが価格の下限になります。コストの合計を下回る価格を設定したのでは最初から赤字で、新製品を出す意味がありません。さらに、競合他社のコスト・価格・自社製品との違いなどを分析し、価格設定の方法を選び、最後に具体的な価格を決めます。

 
市場浸透か上澄み吸収

 

価格設定の目的と、実際の価格設定の関係について、よく持ち出される例があるので、紹介します。

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1つは「市場浸透価格設定」です。新製品を市場に素早く浸透させるために、できる限り最低の価格を設定するというものです。

 

市場浸透価格設定では、低価格によって、競合他社が参入する前に自社の市場シェアを確立することをめざします。低価格で、しかし市場を席巻していれば、とても太刀打ちできないと思わせることが狙いです。

 

一方、低価格であればあるほど、その市場は急激に、大きく成長することが期待できます。また、大量生産ができれば、生産コストや流通コストが下がるので、当初は出なかった利益も次第に上がっていきます。かくして、後発の競合他社が参入するころには、立派に事業として成立している、というのが市場浸透価格設定です。

 

反対に、最初から利益を上げていこうという価格設定もあります。

「上澄み吸収価格設定」というのがその名前です。

 

上澄み吸収価格設定では、導入期に比較的高価格を設定し、高所得者をターゲットにした販売を狙います。この時点で、価格の高い、しかし高品質の製品というイメージが出来上がることでしょう。つまり、下のほうに沈殿したドロドロした部分ではなく、一番良いところ、上澄みから利益を吸収しようというわけです。

 

でもそこでとどまるものではありません。

上澄み吸収設定価格では、降雨初の競合他社が参入して売り上げが落ちてきたときには、徐々に価格を下げるのです。

 

 開発コストは導入期の高価格設定である程度、回収できていますから、価格を下げてもそれほど大きなダメージにはなりません。高品質の製品が、価格を下げて市場に出てくるのですから、これまで手の届かなかった消費者もとびつき、売上の回収も期待できるというものです。

 

需要が増えるかは「価格弾力性」次第

 

価格に応じて、需要を予測する際にも注意が必要です。

 

市場浸透価格設定では、価格を安くすれば素早く市場に浸透する、需要が増えるという前提で低価格を設定しています。上澄み吸収価格設定も、売上が落ちてきたときは価格を下げれば需要が回復するというのが前提です。

 

 たしかに、一般的に安ければ安いほど売れる、需要が増えるという傾向はあります。

しかしその程度は、製品によって変わってくるので注意が必要なのです。

 価格の変化に対して、市場の需要がどれだけ敏感に反応するか、言い換えると、どれだけ弾力的に反応するかを「価格弾力性」といいます。

 

価格弾力性が高い製品は、価格が下がると敏感に反応して需要が増えます。反対に価格を上げると、たちまち売上が落ちることでしょう。

 

たとえば、アクセサリーや高級ブランドものは低価格弾力性が高いといわれています。たしかに、ブランドもののセールに会場いっぱいのお客が詰めかける光景は、ニュースなどでもおなじみ。セールで価格が下がれば、需要が増えるということでしょう。

 

 一方、価格弾力性が低いのは、米や野菜などをはじめとした生活必需品です。必需品ですから、多少価格が上がっても買わざるを得ない、でも価格が下がったからといって必要以上に買ってもしかたない、だから価格弾力性が低いというわけです。

 

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状況によっても弾力性が変わる

たとえば、ティッシュペーパーでも、ふだんコンビニで買っているようなひとは、1箱10円程度の違いをきにしないものです。しかしスーパーやドラッグストアで買う人には、5箱で10円の違いになります。

 この場合、コンビニでは価格弾力性が低く、スーパーでは高いということがわかります。

 

このように製品だけでなく、購入の状況でも価格弾力性は変わってきます。

新製品開発プロセス

どんな製品も最初は、「新製品」としてスタートします。会社が新製品を市場に送り出す方法は、たったの2つしかありません。よそで作ったものを買ってくるか、自社で開発するかの2択です。

 

次の図は、マーケティング視点から見た、新製品開発のプロセスです。

 

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細かい説明は省きますが、図をみるとマーケティングがかなり早い段階からスタートしていることがわかります。

 

マーケティングの目的は、その「製品・サービス」が売れるようにすることであり、そのためには、具体的な製品開発よりはるか以前にマーケティングはスタートしていなければなりません。

 
~ときには捨てるという決断~

 

新製品開発というと、まず製品を開発して、それから他のプロセスが動き出すイメージが強いと思いますが、マーケティングから見るとそれは間違い。具体的な製品開発は、むしろ終盤に近いプロセスです。

 

どの段階でも、ダメとなったら前の段階に戻るか、その新製品開発そのものを破棄することになります。たとえばマーケティング戦略の段階で、ニーズがないと判断したら、コンセプトを練り直すか、アイデアから捨てるという決断も必要です。

 

「売れる」新製品は、そのようにして捨てられた山のような企画の中から生まれるものです。

製品の分類

マーケティングではときに製品を分類してみることが必要になります。

分類の基準としては、まず耐久性と形があるかないか(有形性)、それから用途です。

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最初に、耐久性で分類すると「耐久財」と「非耐久財」の分類になります。

 

これらは形ある製品なので、ここに有形性の分類を加えると、無形の「サービス」が加わり3つの分類となります。

 

このうち、「耐久財」とは、もじどおり耐久性のある製品、車から家電製品、家具から腕時計まで、長期の使用に耐える製品のことです。わりと高額なものが多いので、人的販売が必要とされることも多く、保証などもつけられます。

 

一方で、「非耐久財」は耐久財以外のものを指します。食品や日用品などたいていは1回か短期間の使用で消費されてなくなります。消費者はそのつど購入しなければならないので、売り手としては、どこでも買ってもらえるようにしておかなければなりません。

 

「サービス」は、宿泊やカウンセリングなどの無形の製品、形が見えないだけに、品質の管理など、売り手に対する信用が重要な決め手です。

 

~「消費財」と「生産財」~

 

次に、用途で分類すると消費するための「消費財」、産業向けの「生産財」の2つの分類になります。

 

消費財」は、食品とか車など消費者向けの製品、一方、「生産財」は原材料から工作機械まで、生産するための製品です。

消費財の顧客は一般消費者なので、製品に深い知識を持っている人は多くありません。マーケティング上は、ブランドなどによるイメージのほうが重要になります。

 

しかし生産財は、顧客のほとんどがプロです。専門的な知識をもった人が多いので、品質やアフターサービスなどが重視され、売り手の側もそれに対応できる必要があります。製品のタイプによって、このようなマーケティング上の違いが生まれます。

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消費財は、消費者の購買行動によってさらに分類できます。アメリカのマーケティング学者メルヴィン・コープランドによる、有名な3分類というのがあります。これはマーケティングのみならず、日常のビジネスの現場でもよくつかわれる分類でもあります。

 

コープランドによると、消費財は「最寄品」「買回品」「専門品」の3つに分類できます。「最寄品」は、消費者がひんぱんに、特別な努力をせずに買おうとする製品です。そのため、最寄店で買うことが多くなります。食品や日用雑貨などが代表的でしょう。

 

「買回品」では、消費者が品質、価格、スタイルなどを比較検討しようとします。その結果、あちこちの店を買い回ることになる製品です。このような例としては、衣料品、鵜、家電製品などが該当します。

 

「専門品」というのは、特別な努力をしてでも買おうとする製品。専門店でないと扱っていないような製品も数多く含まれます。たとえば、直営店でしか買えないような、高級ブランドも専門品の例です。

 

また生産財も生産プロセスとの関係で3つに分類することができます。その分類とは、「材料・部品」「資本財」「備品・サービス」の3つです。資本財とは、工場などの設備と機械装置のことで、備品は、資本財ほど長期間使用に耐えないもの、サービスはメンテナンスや修理などを指します。

 

これらが同生産プロセルに関係しているかというと、材料・部品はすべて、製品の生産に使用されます。

 

しかし、資本財は寿命が長いので、個々の製品の生産委は部分的にしか使用されていないといえるでしょう。そして備品・サービスにいたっては、直接、製品に使用されている部分が全くないと考えられます。

 

このように生産財は、生産プロセスで使用されている、されていないの関係で3つに分類されます。

製品戦略

ここからはマーケティングの4Pのスタート地点であり、マーケティング・ミックスの要でもある製品戦略についてです。

 

まずはじめに、「製品」と聞くと、工業製品だったりモノを思い浮かべることが多いと思います。しかしそれだけではありません。

 

マーケティングの神様と呼ばれるマーケティング論の第1人者のフィリップ・コトラーは、マーケティングの対象になる製品には10種類があると言っています。

 

~対象となる10種類~

 

1 有形財   日用品や機械、形のある商品や製品

2 サービス  交通や宿泊など、無形サービス全般

3 イベント  コンサートやスポーツイベントやセミナー

4 経験    テーマパーク等、特別な体験を経験させるもの

5 人     芸能人など、著名人のマネジメント

6 場所    地方自治体など、企業や新住民の勧致

7 資産    土地や株・債券など売買されるもの

8 組織    企業や非営利団体の顧客・財産の獲得

9 情報    新聞や雑誌、インターネットのサイトなど情報メディアなど

10  アイデア  商品の基本となるアイデアそのもの

 

形のある「有形財」はもちろんですが、形のない無形の「サービス」もその対象となります。レストランなどのように料理という財とサービスを同時に提供しているケースもあります。

 

「イベント」にはマーケティングが欠かせませんし、テーマパークなど「経験」を売りにする場合も同様です。芸能人の「人」を売れるようにするのもそうですし、「地域=場所」に企業を誘致したりというのも増えています。

 

最近で言うと、仮想通貨など、売買される「資産」は当然として「組織」を対象に、売り上げを上げたり予算を多く獲得できるような戦略を立てることもできます。「情報」や「アイデア」は意外かもしれませんがマスコミのメディアやインターネット広告は、「情報」を商品として利益をあげています。

 

商品や製品のもとになる「アイデア」も広い意味でうれるようにしたいときは対象になりえるでしょう。

 

このことは実はとても重要です。なぜなら普段生活している身の回りにもあらゆるマーケティングの仕掛けがされているからです。たとえば、駅の中の自動販売機やコンビニの商品を置く位置、スーパーなどのBGMなどあらゆるものがあります。

 

~顧客が製品を判断する要因とは~

 

顧客は次の三角形の図で示された3つの要因で製品を判断しています。

 

 

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「サービス・ミックス」が含まれるのは、形ある製品(有形財)と形のないサービスが、様々な割合で混合している製品が実際に多いためです。たとえば、野菜は「純粋な有形財」ですが、調理師して弁当に入ると「サービスを伴う有形財」になります。レストランで提供されれば、「有形財とサービスの混合」になるでしょう。3つの要素のうち、価格・価格戦略については後の記事で紹介します。

 

~製品戦略は5つのレベルで考える~

 

マーケティングの神様と呼ばれるマーケティング論の第1人者のフィリップ・コトラー、製品について5つの製品レベルで考えるべきだといっています。

 

以下がそのレベルです。

 

1 中核ベネフィット(顧客のニーズを満たすだけのレベル)

2 基本製品(最低限の基本的なことを満たすレベル)

3 期待製品(通常、顧客が期待していることを満たすレベル)

4 膨張製品(顧客の期待を上回るレベル)

5 潜在製品(将来も顧客の期待を上回り続けるレベル)

 

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最初のレベルは中核ベネフィットで顧客が求めているそもそものニーズです。第2のレベル「基本製品」は顧客うが最低限これだけはと思う程度の基本的なレベルです。第3のレベル「期待製品」は顧客が普通に期待する程度のレベルです。第4の「膨張製品」は顧客の期待を上回るレベルです。最後の「潜在製品」では将来の可能性、顧客の期待の期待を上回るレベルです。中核ベネフィット→レベルが上がるほど価値も上がっていきます。

 

簡単に、住まいを例にみていきましょう。

 

中核ベネフィット  雨露をしのげる

基本製品      電気・ガス・水道の使用可能

期待製品      冷暖房や防音性が完備

膨張製品      太陽光発電地震に強い耐震構造

潜在製品      外出先から家電を操作できる

 

製品戦略はこのような製品レベルを考える必要があります。

価格が安い、品質が良いだけでなく、膨張レベルの品質になっているか、もう一歩その先まで深堀して考えられないかなど一歩進めて考えることが大切です。

潜在製品レベルまで追求できるとベストでしょう。

差別化戦略

差別化戦略

 

標的とする市場に商品やサービスを投入しても、他社・他製品とまったく同じ製品・価格・流通・プロモーションで送り出したのでは、他社と市場を折半する結果になるだけです。たとえば、「いちばん安くてうまい」とか「他より高いけど品質が抜群に良い」といった、他との違いを打ち出して、消費者に伝えなければなりません。

 

そのような違いが、消費者の頭の中で一定の位置を占めるようにすることを「ポジショニング」と前にも紹介しましたが、ポジショニングとは、標的市場の中で他との違いを明確にして、消費者に伝える【差別化戦略】ともいえます。

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マーケティングの神様と呼ばれるフィリップ・コトラーは、商品やサービスを差別化する手段には、「製品」「サービス」「スタッフ」「チャネル」「イメージ」の5つがあるといっています。そしてそれぞれに様々な手段があるとしています。

 

ブランドを差別化するいろいろな方法 

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製品による差別化

 

形態      大きさ、形状、構造

特徴      製品の特性

性能品質    特徴が機能する水準

適合品質    使用を満たしているか

耐久性     耐震期間は十分長いか

信頼性     故障や誤作動しないか

修理可能性   修理のしやすさはどうか

スタイル    外観と印象は

デザイン    品質すべてがどうか

 

 

サービスによる差別化

 

注文の容易さ   注文はどれだけ簡単か

配達       スピード、正確さなどは

取り付け     取り付けてもらえるか

顧客トレーニング   使用できるまで教育してもらえるか

顧客コンサルティング データ、アドバイスなどを提供してもらえるか

メンテナンスと修理  良好な状態を保ってもらえるか

 

 

 

スタッフによる差別化

 

コンピタンス  技術と知識は

礼儀正しさ   丁寧かつ親切か

安心感     信用できるか

信頼性     一貫した正確なサービスか

迅速な対応   素早く対応してもらえるか

コミュニケーション わかりやすく伝える努力をしているか

 

 

 

チャネルによる差別化

 

カバレッジ     代理連などが近くにあるか

専門技術や専門知識     代理店などが必要な技術や知識を教育されているか

パフォーマンス        代理店の能力は

 

 

 

イメージによる差別化

 

アイデンティティ  会社や製品をどのように特徴づけるか

イメージ      消費者はどのように捉えるか

 

 

 

以上のように差別化といってもさまざまな手段があり、

「品質や価格」だけが差別化の方法ではないということです。

ブランドについて

今回は「ブランド」についてです。

 

ブランドと聞くと、何を思い浮かべるでしょうか。まず思い浮かぶのはヴィトンやシャネルのような、いわゆる有名なブランドが多いのではないでしょうか。「ブランドもの」といえば、これら有名ブランドの製品のことです。

 

近年よく聞く〇〇ブランドとしては、「プライベート・ブランド」というのもあります。大手スーパーなど流通業者が、自社の流通だけで販売する商品群で、同程度の商品が比較的安く買えるところが消費者にとってメリットです。

 

いまや大手の流通チェーンで、プライベート・ブランドを持たないところはないといっていいほど当たり前の〇〇ブランドになりました。プライベート・ブランドに対して、大手メーカーが作って全国に展開するような、(プライベート・ブランドより少し割高な)商品を呼ぶときは「ナショナル・ブランド」といいます。

 

 

「ブランド」とは要するに何のことか

アメリカ・マーケティング協会の定義では、ブランドとは「商品やサービスを識別させ、競合他社の商品やサービスから差別化するための名称、言葉、記号、シンボル、デザイン、あるいはそれらを組み合わせたもの」というふうに定義されています。

 

つまり、他社とは違う〇〇という商品名や、そのデザインなどはみなブランドということです。もし、あなたの会社の商品があまり有名でなく、家族も知らないようなものだったとしても、立派なブランドなのです。

 

ただし、先ほどの定義の中に「競合他社の商品やサービスから差別化するための」とある点には注意してください。 

 

高級ブランドやプライベート・ブランド、ナショナル・ブランドは、名前を聞いただけでわかるほど、他社と「差別化」するために役立っています。あなたの会社のブランドがそれほどでないとしたら、ブランドには変わりないとしても、力の弱いブランドだということです。

 

身近なブランドを例にあげると知らない人はいないというくらい認知されているコカ・コーラマクドナルドなどがあります。これらもブランドです。

 

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またブランドは、階層で考えることもできます。

有名ブランドで言えば、「ルイヴィトン(ジャパンカンパニー)」という会社自体もブランドですし、Bulgari S.p,Aという会社が所有する「BVLGARI」は、宝飾品から香水、メガネまでそろったブランドです。

 

ブランドには5つの階層があります。

 

1 コーポレート(企業)ブランド

Ex) ソニーマイクロソフト、グーグルなど  →  企業名

 

2 事業ブランド

Ex)ミスタードーナツ牛角など         →  企業グループ内の事業単位

 

3 ファミリー・ブランド

Ex) ビオレ、植物物語など           →  複数の製品カテゴリー

 

4 製品群ブランド

Ex) カップヌードルマルちゃん正麺など    →  複数の製品

 

5 製品ブランド

Ex)綾鷹からだ巡茶など          →  個別の製品

 

以上がブランドの階層です。

 

大きな会社は必ず複数のブランドを持っています。例えば、「ミスタードーナツ」「牛角」などは、消費者の立場からみればそれぞれチェーン店の名前かもしれません。

 

しかし、ブランドとしてみれば、ともに【株式会社太陽エンタープライズ】の事業ブランドですし、「土間土間」「かまどか」などもそうです。ブランドを育てる立場の人は、こうした見方も忘れてはいけません。これからは、町で見かけたブランド名に注意すると面白いかもしれません。

 

ブランドの力は「ブランディング」次第

ブランドは、つくっただけで成り立つわけではありません。名称やロゴを見ただけで、他と差別化できるほどの力を持つまでには、様々な戦略が必要です。

このように、商品やサービスにブランドの力を持たせることを「ブランディング」といいます。有名ブランドと、名もないブランドの差は、これまでに行ってきたブランディングの差といっていいでしょう。

 

ブランドは会社の財産である

ブランドの力を持った商品やサービスは仮に全く同じ品質の商品やサービスがあったとしても、消費者にとってはプラスアルファの価値があります。早い話、ブランドものかどうかで、何倍も高い価格で喜んで買ってもらえることがあります。

 

このプラスの価値を「ブランド・エクイティ」といいます。

カスタマー・エクイティと同様、ブランドもまた会社の財産ということです。

 

どんなブランド戦略があるのか

商品やサービスをブランド化しない、品質・サービス・価格で勝負、という道もなくはないです。しかし今日では、生鮮食品ですら、「ブランド牛」「ブランド野菜」「ブランド米」などが全盛の時代。

 

ブランディングの力を借りない選択肢は、現実にほとんどないといっていいでしょう。ブランド化にあたっては、一般に4つの戦略が考えられます。

 

 ①個別の製品ブランドにする

 ②1つのファミリーブランドにする

③いくつかのファミリーブランドにする

④企業ブランドと組み合わせる

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何のブランドも持っていない会社や、会社にとって全く新しいタイプの商品・サービスの場合は、個別の製品ブランドから出発するしかありません。ただし、その商品やサービスが成功すれば、製品群ブランドに発展することも多いものです。

 

実際、日本コカ・コーラの缶コーヒー「ジョージア」は、オリジナルからスタートして、現在は20種類以上の製品群を構成しています。次に、商品カテゴリーが違う製品を発売する場合などは、ファミリー・ブランドとするのが1つの戦略です。たとえば、再春館製薬所の基礎化化粧品軍は、「ドモホルンリンクル」という1つのファミリーブランドとなっています。

 

また、1つの会社でも」違う製品群を開発するときは、いくつかのファミリー・ブランドにすることが多いものです。花王には、洗顔料などのファミリー・ブランドとして「ビオレ」がありますが、乾燥性敏感肌のスキンケア・ブランドは「キュレル」としています。

 

さらに、企業ブランドが十分に強い場合には、製品ブランドと組み合わせる戦略も可能です。

 

こうしたブランド戦略がうまくいくと、消費者はブランドに強い愛着を感じるようになります。たとえば、ファッション・ブランドのシャネルは、日本で「シャネラー」と呼ばれるほど、全身にシャネル製品をまとった消費者を出現させました。

 

このように、あるブランドに対し、まるで忠誠を誓ったかのように購入し続ける傾向を「ブランド・ロイヤルティ」といいます。顧客ロイヤルティもそうですが、ブランド・ロイヤルティを高めることは、すなわち、安定した顧客を確保することとなります。

 

また、同じ商品やサービスでも、より高い価格で買ってもらえることにもつながるため、ファッション・ブランドに限らず、すべての企業・製品ブランドにとって重要な目標となります。